生理痛・生理不順と不妊の関係

2019.7.23

生理

ひどい生理痛や生理不順がある場合、「妊娠しにくいのでは」と心配になりますよね。大切なのは、生理痛や生理不順の原因をきちんと調べること。たとえ不妊の原因となるような病気が隠れていても、早めに適切な治療を行えば妊娠の可能性を高めることができます。今回は、生理痛や生理不順と不妊の関係について解説していきます。

その生理痛、子宮筋腫や子宮内膜症の症状かも

生理痛には個人差があり、強い痛みがあるからといって必ずしも何らかの病気によるものとは限りません。体質や心理的なストレスから生理痛が起こることもあります。とはいえ、強い生理痛が長期間続く場合は、注意が必要です。

そもそも生理のときに下腹部が痛くなるのは、月経血を押し出すために子宮が収縮するためです。10〜20代にかけては強い痛みを感じるものの、通常は年齢を重ねるにつれて痛みは軽減していきます。逆に、「以前より生理痛がひどくなった」、「激しい生理痛が続いている」、「痛み止めが効きにくい」というような人は、子宮内膜症や子宮筋腫などの婦人科系の病気を発症している可能性が考えられます。

子宮内膜症とは、子宮内膜に似た組織が子宮以外の場所にできてしまう病気です。この組織がホルモン周期に合わせて増殖や剥離、月経時の出血を起こすことで強い痛みを生じます。一方、子宮筋腫とは子宮に良性の腫瘍が発生する病気で、その場所や大きさによって強い生理痛や過多月経(経血量が多い状態)などの症状を引き起こします。どちらも、進行すると不妊の原因となることがあります。

「生理痛は病気ではない」「痛くても我慢すべき」と思っている人もいるかもしれません。しかし、妊娠を希望しているのであれば、早めに婦人科の検査を受けておくとよいでしょう。生理痛の原因が子宮内膜症、子宮筋腫のいずれだとしても、適切な治療が痛みを緩和し、不妊のリスク軽減にもつながります。

生理不順は排卵障害のサイン?

では、生理不順についてはどうでしょうか。正常な生理周期の目安は25~38日ですが、これが46日以上と長かったり、逆に24日以内と短かったり、あるいは周期にばらつきがある状態を生理不順といいます。最近は、生活習慣の乱れや仕事の忙しさ、ストレス、ダイエットなどの影響もあって、生理不順を抱える女性が少なくありません。

生理不順について考えるときに重要なのは、「きちんと排卵しているかどうか」という点です。生理周期が25~38日で安定しており、予定通りに生理が来るという人は、毎月排卵していると思ってよいでしょう。しかし生理不順の場合は、たとえ周期的に出血があっても排卵を伴っていない可能性があります。そのような症状を「無排卵周期症」と言います。

子宮では毎月、受精卵(胚)の着床を迎えるために子宮内膜が増殖して厚みを増していき(増殖期)、排卵が起こると黄体ホルモンが分泌され、内膜は増殖を止めて(分泌期)の状態になります。そして胚が着床しなければ2週間後に内膜は剥がれ、月経血として体外に排出されます。

ところが、排卵が起こらないと黄体ホルモンも分泌されないため、子宮内膜は増殖期のまま、どんどん厚くなります。そのうちに内膜の表面だけが剥がれ落ちて排出されるのですが、それが周期的に起きると、まるで生理のように見えてしまうのです。実際には生理ではなく、排卵がないので不妊の状態に陥っているのです。

排卵の有無は基礎体温を見れば分かるので、生理不順がある人は基礎体温を計ることをお勧めします。毎日計るのは面倒と思うかもしれませんが、最近ではスマートフォンのアプリと連動して簡単に基礎体温を記録できる体温計もあります。

卵子はあっても排卵しない多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

無排卵周期症の1つに、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)があります。卵巣内の男性ホルモンの濃度が高いため、卵胞が十分に発育できず、排卵しにくくなる病気です。

排卵されない卵胞は卵巣にとどまるため、超音波検査で見ると卵巣の表層部(一番外側)に発育不十分な10mmほどの卵胞(嚢胞)が多数並んでおり、そのことから多嚢胞性卵巣と呼ばれています。30代までの比較的若い女性で多く見られますが、なぜ発症するのか詳しい原因は明らかになっていません。排卵しにくいため月経周期が39日以上の稀発月経だったり、基礎体温が低温期と高温期の二相に分かれず一相になっていたり、まったく生理が来ないなどの月経異常が見られたら、多嚢胞性卵巣症候群の可能性があります。

多嚢胞性卵巣症候群は不妊の原因になりますが、適切な治療を行うことで妊娠が可能になります。治療ではクロミフェンなどの排卵誘発剤を使って排卵を促し、生理周期を整えることを目指します。

薬物療法だけで排卵が起こらない場合は、卵巣表面に穴を開ける腹腔鏡手術を行うこともあります。また、多嚢胞性卵巣症候群は長期間放置すると、排卵誘発剤が効きにくくなる傾向があります。したがって、多嚢胞性卵巣症候群の自覚症状である生理不順を放置せずに、基礎体温から気付いたことがあれば早めに婦人科を受診することをお勧めします。

激しい生理痛や生理不順は、不妊と関係する可能性があります。しかし生理痛や生理不順があるからといって、全員が不妊になるわけではありません。まずは、基礎体温の記録などで自分の生理のタイプを把握してみましょう。そして、症状がある場合は一度、専門の医師に相談してみましょう。

(文/メディカルトリビューン編集部)