採卵の痛みってどれくらい?
体外受精や顕微授精を行う場合、避けて通れないのが採卵です。膣から針を刺し、卵巣内の卵子を吸引して体外に取り出すことになるため、どの程度の痛みがあるか不安に思う女性は少なくないでしょう。ここでは、採卵時に生じる可能性のある痛みについて説明します。
採卵ってどうするの?
採卵は体外受精や顕微授精を予定している女性であれば必ず経験することになるプロセスです。通常、経腟超音波で卵巣内の卵胞(卵子を包んだ袋)の位置を確認しながら30cmほどある採卵針を膣壁から刺し、卵胞液とともに卵子を回収します。
膣壁に1カ所針を刺したら、そこから複数の卵胞を刺して卵子を回収することもあれば、左右両方の卵巣に針を刺して卵子を採取する場合もあります。採卵に要する時間は採取する卵子の数が多くなるほど長くなりますが、通常は約15~30分です。
どれくらいの痛みがあるの?
採卵は手術室や採卵室などで行われます。お腹を切るような手術ではありませんが、最初に採卵針を膣粘膜に刺す時にチクッとする痛みを感じることが多いようです。一方、卵胞を刺して卵子を回収する際に痛みを感じることは少なく、押される感じや引っ張られるような感覚を覚えることが多いとされています。
なお、排卵誘発剤の使用により多くの卵胞が育った場合や、採卵したい卵胞のある場所が膣から遠い場合、患者さんの痛みへの不安が強い場合などには、患者さんと相談した上で麻酔を用いた採卵が行われることもあります。麻酔の方法としては、針を刺す場所の周辺に注射で薬を投与する局所麻酔や、鎮痛薬の静脈投与が行われることが多いようです。
ただ、痛みの感じ方や薬の効き方にはかなり個人差があります。そのため、麻酔なしで採卵しても痛みをほとんど感じなかったという女性がいる一方で、麻酔をしたのに激しい痛みに苦しんだという女性もいます。普段から痛みを感じやすい人は、事前にそのことを医師に伝えておき、自分に適した方法で採卵してもらうことが大切です。
知っておきたい麻酔のメリットとデメリット
前述の通り麻酔の効き方には個人差がありますが、麻酔薬を静脈投与した場合などは投与した途端に意識を失い気付いた時には採卵が終わっていた、という経験をする女性が多いのも事実です。もちろん、痛みを全く感じず採卵できるならそれに越したことはないのですが、麻酔にはデメリットやリスクがあることも覚えておかなくてはなりません。
例えば、麻酔の後に頭痛や吐き気といった副作用を経験する女性は少なくありません。また、まれではありますが、麻酔にはアレルギー反応や呼吸困難などのリスクもあります。さらに、麻酔の後は安静を保たなくてはならない時間が必要になるため、仕事などの都合で採卵に時間をかけたくない場合は無麻酔を選ぶ女性もいるようです。
採卵針の「太さ」も痛みに影響
麻酔をするかどうかに加えて、採卵に使用する針の太さも痛みに影響する可能性があります。一般的に使用されている針の太さは17ゲージ(外径約1.5mm)の太い物から23ゲージ(外径約0.6mm)の細いものまでさまざまですが、太い針を使用すると痛みが強く出ることがあるようです。ただ、太い針を使うと短時間で卵子を回収でき、卵子が崩れにくいというメリットもあります。
一方、細い針は痛みを感じにくいのですが、卵子の回収に時間がかかる、卵子が崩れるリスクがあるなどのデメリットもあります。
医療機関によって採卵時の麻酔の方針に違いも
医師の考え方や医療機関の方針によって、採卵時の麻酔の有無や方法にはかなり違いがあります。もし採卵時の痛みに強い不安を抱いているのであれば、まずは専門の医師に相談してみましょう。また、その際には麻酔のメリットだけでなくデメリットについてもしっかりと話を聞き、自分に適した方法を医師と相談しながら選択することが重要です。